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東京・自由が丘の住宅地近くにあって、近隣のリピーターはもちろん、遠方からの根強い菓子ファンに愛されている「モンサンクレール」。オーナーの辻口博啓氏は、多彩なブランド展開を手がけながらも、生菓子を扱う店は地元自由が丘の店だけというこだわりを持っている。オープン仕様のキッチンから毎朝できたてをケースに並べ、当日売り切る鮮度を何よりも大切にしているからだ。数々のコンクールで優勝経験を持ち、製菓学校の講師も務める辻口氏のオリジナル菓子も多く、そのおいしさは「軽やかで食べやすい」「もう一つ食べたくなる」と幅広い層から高い評価を得ている。
本書では、オペラ、シブーストなど定番菓子を現代的に生まれ変わらせた人気レシピを始めとして、菓子に合わせて微妙に加減する生地とクリームの関係、日常づかいやギフトに欠かせない焼き菓子や半生菓子と、辻口氏のフラッグシップであるアントルメまで、モンサンクレールのすべてを1冊にまとめた。
菓子の軽やかな味を表現する最新技術とは?
砂糖を減らさないで甘さを控える手法は?
もう一度あの菓子を食べたいと思わせるには?
モンサンクレールの実際のレシピから学べる、初のプロ向け専門技術書。
レシピの難易度:★★★
本書は次の4つの大きなセクションと基本パーツの解説、モンサンクレールの秘密が詰まったコラムから構成されている。
「軽やかさの秘密」
オペラ、レアチーズケーキなど定番菓子を、伝統に敬意を表しながらも、独自のテクニックによって軽やかにつくり上げる手法を紹介。たとえば溶かしバターを加えないビスキュイジョコンドや、凝固剤を使わずにチーズクリームを固める方法など。
「生地とクリームは表と裏」
基本的な生地こそ、理想とする味の表現にもっとも欠かせないパーツ。このセクションではパート シュクレ、パータ シュー、パート フイユテ アンヴェルセ、マカロン生地、ダッコワーズ生地、パータ ジェノワーズをモンサンクレールでの実際のレシピから学び、最終形となる菓子と併記することで、「菓子によって生地を調整する」という繊細なテクニックに迫る。
「すべての工程には意味がある」
小さな焼き菓子や半生菓子は、華やかな生菓子に比べると地味だが、菓子店では重要な存在。工程がシンプルだけに、腕の良し悪しがすぐに結果に現れる。パティシエを志す方には最初の関門といえる、これら小さな菓子のコツを実技、解説する。
「菓子のオリジナリティ」
オリジナル性の高い菓子をつくり、世に残すことは、パティシエにとって究極の目標。ここでは辻口氏が秘蔵のスペシャリティを満を持して公開。これまで秘密とされてきたコンクール優勝作品「ジャルダン デ サンス」「セラヴィ」をはじめ、辻口氏の名を最初に轟かせた飴細工のテクニックまで掲載。
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菓子の本来の色は、とても繊細だ。たとえば白の中にも、クリームの白、小麦粉の白、砂糖の白、メレンゲの白といった違いがある。表紙となった菓子「フロマージュ クリュ」はチーズのクリームに生クリームをかけ、粉糖をふる。その白い菓子を白い皿にのせ、どこまでも軽やかな世界観を表現した。
辻口氏の菓子のデコレーションは基本的にシンプルで色数が絞り込まれている。かといって、強くシャープに主張するというものではない。あくまでも、優しく、軽やかに、見た時に笑顔になれる、そんな菓子には、笑顔を絶やさない辻口氏のお人柄が反映されていると考え、本書のデザインも「重くない」「巨匠的にしない」「でも可愛らしすぎない」という姿勢で臨んだ。
めざしたのは「上品でクリーンな色気」。男らしく骨太な写真を得意とするカメラマン大山裕平氏が、新しい境地に挑む。大山氏と辻口氏によるにこやかながら鬼気迫るコラボレーションが、菓子づくりの一瞬を切り取った手順写真に浮かび上がる。
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- [担当編集者より]
- パティシエの方や志望者の方にはぜひおすすめしたい本書だが、技術の凄みはもちろん、辻口氏の経営哲学の秘密が明かされるコラムは必読だ。モンサンクレールには売り場の心得8箇条があることや、菓子の原価計算についても言及。ここでは、なんと菓子「シシリー」の原価を公開している。秘密とも思えるこれらの情報を本書で公開する意図は、辻口氏が後進のパティシエの皆さんに必要な情報と感じているからだ。氏は若くして独立開業され、さまざまな苦労をされて、独自の技術と経営を確立してきたが、競争の激しい現代のパティスリー業界で生き抜くための、道標となる技術書が必要と感じておられたそうだ。辻口氏の初のプロ向け専門技術書として本書をぜひ進化する菓子づくりに役立てていただきたい。